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さらに、私たちの目指す人間の音楽劇、ムジークテアターの創造方法に共感したスタッフが、今回も揃った。
指揮・音楽監督は井崎正浩。昨年のブダペスト国際指揮者コンクールで優勝して以来、ブダペストが彼を放さない。長年の蓄積と、しっかりした基礎をもち、しかも誠実で、音楽を深く理解している人。今年正月に初来日した国立ブダペスト・オペレッタ劇場の『メリー・ウィドウ』で日本デビューを飾り、日本でも人気急上昇の彼の『こうもり』は、各界から注目の的だ。
当協会の公演ではステージングとして舞台作りを手掛け、私と長年コンビを組んできた藤代暁子が今回、共同演出。かつてのSKDの大スターでありながら、フルブライト留学生としてニューヨークのジュリアード音楽院に学んだ才能あふれる人だ。また、創立以来ずっと当協会のオペレッタの訳詞を手掛けている滝弘太郎は、今回の『こうもり』に全面的に新しい訳詞で臨んだ。
『こうもり』のダンス・シーンはクラシック・バレエでなくては駄目。バレエ界の重鎮、横井茂の主宰する東京バレエグループが、彼の振り付けで魅惑のウィンナ・ワルツ、そして華やかなポルカに人々を巻き込む。
美術の川口直次は、『メリー・ウィドウ』では見事なジャポニズムを描いたが、今回のサンルームや温室が広がるサニーで軽やかな“シャンパン・オペラ”にふさわしい舞台装置はウィーンとは好対称で何とも美しく、それを名コンビの奥畑康夫の照明が艶やかに浮び上らせる。また、『シューベルトの青春』で素敵な衣裳を選んだ畑野一恵が、当協会創立以来ずっとメイクを手掛けている清水悌とコンビを組む。そして、音響の山北史郎、演出助手の米澤建治、舞台監督の小松充は、協会の目指すものに共感し、すべてを理解して創作にあたる強力なスタッフだ。ベルリン・コーミッシェオーパーのオーケストラでトロンボーン奏者として活躍していた上垣聡もまた、ムジークテアターに深く共鳴し、副指揮に臨む。そして、オーケストラ・イシスペクター、トロンボーン奏者の榊原徹は、当協会の音楽部部長として、コンサートマスターの原田大志とともにアンサンブルを重視した、“オペレッタ大好き”奏者の集まる当協会オーケストラの一つの伝統を築き、中心的な役割を果たす。
キャスティングにあたっては、今回も平野民子が、当協会創立以来すべての公演制作にあたっているプロデューサーの清島利典を助け、今の日本を代表する歌役者を集めた。

 

爽やかな秋の宵、“シャンパン・オペラ”『こうもり』で、“一夜の夢”をご覧いただければ幸いです。

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